医療社会学の草分けアメリカのタルコット・パーソンズ(1902-1979)は、四つのモデルを示し医師と患者の関係について説明ました。医師をサービスの販売者、患者を消費者とする【市場モデル】では、医療費は成功報酬ではなく、医師と患者の親密な関係の上に成り立つ共同作業を説明できないとしています。公的規則に基づく上意下達の国税庁と納税者のような関係の【官僚制モデル】では、治療を成り立たせているのは医師と患者自身であり、いちいち指示や命令に従っているのではなく、学問の自由と同じように医師は職業的裁量で、自律的かつ自己責任で治療に当たっており、医師と患者間の信頼や連帯関係を説明できないとしています。【民主的アソシエーション】は、平等で自発的参加による構成員で組織され多数決で意思を決定しますが、医師と患者の専門性における能力差を反映せず専門能力を損なうことになりかねないとしています。【合議制アソシエーション】は自発的参加で構成されながら、医療従事者は専門能力と経験で階層化され、異なった権限と責任を持ち、患者の治療を共通目的とする連帯集団とみなすモデルです。患者を単なる顧客ではなく組織の構成員として位置づけ、医療提供者は充分な専門的能力と規範、患者のライフスタイルやQOLを尊重する姿勢を持つことが要件となります。医師の専門的裁量と患者との能力差を認めるかわりに、医療行為の妥当性を判断するために充分な説明と共同決定を導く責務を医師に求めます。医師は健康回復という社会と患者からの信託責任を負い、常に専門的技術を磨く責任に加え、倫理的・道徳的責任や保健政策の改善等への広範な社会的責任を担う「信頼=協力関係に基づく共同の意思決定」という、新たな医師と患者関係を示しました。ただしあまりにも厳格な個人の自己決定権の主張は専門職の機能遂行に対する制約になると注意を喚起しています。療養する人とケアする人の良好な関係は、この合議制アソシエーションのような、きめ細かいインフォームド・コンセントにより、療養者の意思の尊重と専門職の機能遂行とのバランスをはかることのできる関係としてイメージされます。詳しくは下記書籍をご参照ください。 参考文献:高城和義著 「パーソンズ 医療社会学の構想」 岩波書店 2003.4刊