例えば認知症の方々が転倒して大腿骨を骨折した、心筋梗塞を発症した、誤嚥して呼吸困難になった等、救命・救急医療の必要は、在宅であれ介護施設であれ、しばしば生じます。もちろん緊急の場合は、救急車で救急病院へ運ぶことが第一ですが、様々な要因で必ずしも円滑な対応が行えるとは限りません。そこには医師不足といった一般的理由以外の、認知症特有の事情や課題があります。一人暮らしで周囲の関わりが希薄だったり、かかりつけ医などでの継続した医療へのアクセス歴が無い場合、いざという時に、発症前の生活や心身情報の把握が出来ず、治療方針の選択や同意に困難が生じる場合が多々あります。急性期病床では、治療中に生じ得る認知症の周辺症状への充分な対応力が整備されているとは、いえません。回復期には認知症ケアの対応力がある医療療養病床などへの移行が望ましいのでしょうが、病床削減や医療(重症度)区分などの制約により後方支援がスムーズに行えない現実があります。また、介護施設の医療職配置の現状では身体合併症が重度な入所者の引き受けには限度があり、必ずしも病状にあった在宅医療を担う医師や訪問看護師が地域にいるとは限らない等の事情が複雑に絡み合っています。認知症の人の緊急医療には、救命・救急医療と精神科救急医療の両面を充実する必要があります。救命・救急医療機関における人的、物的認知症対応力の向上、抑制や薬による身体拘束を避けるためにも、認知症の周辺症状に効果が認められる否定型向精神薬を含む「認知症に対する薬物適応のガイドライン」も必要でしょう。また家族介護者に事故等が生じた時の緊急レスパイトや保護も含む対策も必要になります。様々な課題がありますが皆さんのご意見は如何ですか。